能の面研究会について

私たちは 「舞台で使用できる能(狂言)面」 を合言葉に、面打ちの初心者からベテランまで、 互いの技術や経験を交流しながら、作品を前に真剣な意見交換を行い、時には能楽師や狂言師の先生方を交え、 能や能面談議に花を咲かせ、楽しく能面作りに励んでいます。

四角い檜材から彫刻、塗り、彩色を経て作り出される表情豊かな能面に、 手作りの余情を楽しみ、きっと限りない愛着を感じることでしょう。

面の打ち方は、地域や教室によって多少手法が異なるようで、これが正解ということはありません。 私たち 「研究会」 は、制作手法や表情などについて、互いに議論しながら自分の納得する方法を研究し、創意工夫しながら、わいわい楽しく面を打っています。

◆ 能面への思い (研究会のメンバー紹介)

メンバーの作品

テーマに追いかけられて

植田美雲

豊中の島熊山能面祭の実行委員として関わる中で「たくさんの表情を持つ面」と云うテーマに追いかけられて五年、いまだ悩みの中にいます。
一年にいくつも打って、たった一か所だけ気付く、そんな繰り返しの二十年余り、いつまでたっても勉強中です。
遠慮なく、酷評! 私大好きです。

メンバーの作品

展示会によせて

小笠原尚子

前回の展示会から、二年程掛け、ゆっくり、ゆっくりと狂言面“大黒”を打たせて頂きました。その間には日本各地で震災を受け、時にご冥福と復興を祈念しながら打たせて頂きました。
“大黒”は江戸時代、七福神の中でも特に信仰を集めた福の神ですが、狂言では「夷大黒」などの曲に用いられるそうです。
彫り、彩色共に、まだまだ先生方のお手を借りての作業ではありますが、穏やかな環境下で面と向き合わせて頂けることに感謝しつつ、次の作品にも心して取り組ませて頂きたいと思います。

メンバーの作品

能面に出会って

木津多真美

なんで能面を打っているのか?色んな人に聞かれます。私自身何故いきなりひきつけられたかわかりません。ただ、能面を作りはじめ、作り方はもちろん、先生方と話す時間やその環境によって、世界がすごく広がりました。
能楽、仏神道、能面の面白さや人の感情についてなど、以前から興味があった事と繋がっている!と感じました。
日本の古典芸術は自分が作ることの経験により過去の制作者の魅力や思いに気づく気がします。
一つの面で多くの表現を生み出す能面、人間の表情より引きつけられるものが、たっぷり詰まっています。

メンバーの作品

初心者でも打てました!

坂井ひとみ

能の面研究会に参加させていただくようになって一年半になります。
面作りは全くの初めての経験でしたが、絵画と同じように部屋に飾りたい、という動機で始めました。
最初は皆さんの話を聞いていて、自分の面に対する知識の乏しさに、場違いの場所に来てしまったと戸惑いましたが、 そんな私を皆さんがやさしく温かく手ほどきしてくださり、未熟ながら2面も完成することができました。
今は楽しく参加させていただいています。

メンバーの作品

能面作りの難しさ

庄司義信

自分の浅知恵で面打ちの難しさが少しわかってきた矢先に、昨年の豪雨で自宅が床上浸水に合い気持ちが参っていましたが、先輩や仲間の励ましで、やっと面と向き合えるようになりました。
先輩の面に対する姿勢が高く、少しでもち近づけるよう、仲間のありがたさを味わいながら、能の面研究会に通う今日です。

メンバーの作品

能面に夢中です

田川聞悟

定年後のための趣味としてたまたま新聞で見た文化教室の能面講座に入会したのが能面との初めての出会いでした。
二、三面彫った頃に転勤のため5年間中断しましたが、退職後に再開してからは文化教室では何となく物足りなくなり「大阪能の面研究会」に入会しました。 
研究会で色々と指導を受け、今まで習ってきた事の意味が少しずつ解ってきました。
一つの面の中にある陽と陰の部分、視線の方向や口の僅かな開き加減による変化や肌の表面の微妙な凹凸や色使いにより年齢や表情が随分と変わる事などです。
面打ちを始めて数年の自分にはまだまだ知らないことが多いのですが、一面一面と打つたびに、面に対する気持ちが深まって夢中になっていっています。
これからも能面自身が持っている心情を何とか表わせるように正確に彫り、丁寧に彩色する事を心掛けていきたいと思います

メンバーの作品

能面への思い

辻本和仁

私の本業は、書籍や設計図の複写の仕事をしていました。
能面を打つことは、「古面の写し」コピーを作ることだと言われています。機械で作るコピーは簡単に写しとれますが、能面の写しは、型紙と写真を頼りに彫りだす事になります。木彫りから彩色まで古面と同じものを作り出すということは、今の私の力では到底不可能だと思います。
しかし、角材の中には必ず赤鶴や河内の本面と同じものが一面ひそんでいます。それを先生や諸先輩方の指導の下に技術を習得し、いつの日か、打ち出したいと夢を見ています。

メンバーの作品

能面を打って!

平本 茂

以前から面を打ちたいと思いながら機会もありませんでしたが、あるきっかけで「大阪能の面研究会」を知り何も分からず入会させていただき、右往左往の一年を迎えるところです。
香り、切れ良い檜材を使って、刀の入れ方、難しい彩色と、毎回毎回が失敗の連続でありますが、今は、一つ一つの面が自分なりに楽しみ、納得できる作品に仕上げればと面に向き合っている所です。
これからも諸先輩方のご指導のもとで頑張りますので、どうぞよろしくお願いたします。

メンバーの作品

年齢に負けず、これからも頑張ります

堀部田鶴子

年ばかり重ねて、今まで覚えたことも忘れがちですが、諸先輩に助けられて何とか年に数面完成させています。
これからも、頑張ろうと思います、よろしくお願いします。

メンバーの作品

能面について思うこと!

前田哲郎

一人の役者が千変万化する役と感情を現すことは難しく、現代演劇では人の素顔に化粧をすることで変身する方法をとっています。 ところが能楽は古来より仮面を捨てずに使ってきました。
これは能楽が古臭い芸能で伝統を守っているからだと思われがちですが、そうではなく、能面は人間の顔を使うより豊かな表情を現すことが出来るように精巧にできているからです。
演者が思い通りの表情で舞い、人間の顔では出せない悲しさ・美しさ・気高さ、あるいは強さ・恐ろしさを表現できるのです。
能は能面があってこそ成立しました。
しかし、それによって演者に大きな苦痛と制約・規制を強いることになり、それが又演技を上達させてきたのではないでしょうか。
博物館に展示された使われない古面より、彫りも彩色もハンデを背負い見下されがちな新面の中にも、現代の人に受け入れられ能に使える逸品が生まれるのではないか?と日夜、能面打ちに励んでいます。負け惜しみですかな!

メンバーの作品

能面の魅力と悩み

松村満忠

思いを込め、何度も何度も見直し完成させたつもりの面を後に見ると、不満だらけで、何ともやりきれなく、力量不足を痛感し、改めて面の難しさと奥深さに悩み、魅了されています。
能面は洗練された気品や美しさ・力強さを持ち、変化する表情(中間表情)を持っています。この中間表情が曲者で、ほんの一粍彫り違えれば表情が違い、変化もしません。本面や古面を手元に置いて観る機会が少なく、一つの方向や止まった表情の写真だけでは、変化をとらえられず騙されることが多いようです。
今後も、能楽を観る機会を増やし、古面をみて、能面の表情や表現される思いを受け止め、チャレンジを続けたいと思います。